chausser(ショセ)のトラベルシューズ、この夏はHUMAN WOMANだけの別注モデルが登場。
chausserのオーナー兼デザイナー、前田洋一氏へのインタビューをご紹介いたします。
「靴について」「旅について」など、色々と興味深いお話をお伺いしてきました。

— 靴デザイナーをめざしたきっかけは?

父が靴職人で、実家は宮崎で靴屋をやっていました。ハンドメイドの靴を作っていて、自分たちの店で売っていました。そういう背景もあって、ですね。 僕自身は高校を卒業してからすぐ上京して、ただ、その時は靴デザイナーになりたいと思って出てきたわけではなく、たまたま実家が靴屋だったので、とりあえずは靴屋さんに就職してみようかな、という感じでした。 就職した会社が、なかなか大きい会社だったので、まずは販売を経験して、その後、7年目くらいに、本社のオリジナルを企画する部署に異動しました。そこで企画として、「靴を作る」仕事を5年くらい経験させてもらったことがきっかけで、もっと深くやっていきたいな、と思い、靴の企画会社に転職しました。

— 靴の企画会社というと、どのような会社なのでしょうか?

そこの会社自体もオリジナルのブランドを持っていたのですが、50%くらいは、アパレルのクライアントからの依頼で靴のブランドを作ったり、というライセンス事業でした。そこで2年くらい経験を積んだ後、独立しました。

— 小さい頃から身近に「靴」という存在があったのも影響していますか?

お店を持っていて、お店の裏が修理とかする工房だったので、身近にはありましたね。ただ、実際に自分が物心つく頃には、ほとんどハンドメイドはやっていなかったんですよ。

— 時代の流れ的なものですか?

そうですね、既製品を売りつつ、靴の修理をやって、という感じでした。 そんな環境だったので、もちろん「靴」というものは生活の中で大きな存在でした。

— 「靴」作りに対して、こだわっていることや思いがあれば教えていただけますか?

僕は、靴自体は「道具」だと思っているので、足を保護したり、歩行するためにある「モノ」だというのが大前提です。そこから、もちろんファッション性などは加わるのですが、根本には「道具」という感覚があって、機能性や心地よさなど、そういう部分は今までもそうですし、これからも重視していきたいと思っています。

— あまり足に合わない靴を履いてはいけませんよね?

そうですね(笑)

— 女性だと、おしゃれのために、がまんして履いてしまったりとかするので。

靴によっては、デザインが先にくるということもあると思います。 だけど、うちの靴の場合は、レディースでもヒールの高さは5cm以上のものは作らないようにしています。パンプスでも、5cm-5.5cmくらいのヒールであれば、ある程度安定感があって、履きやすさも保てるのですが、それ以上になるとどうしても構造的に負荷がかかってきてしまうので。



— 機能性というところから繋がるかもしれないのですが、トラベルシューズを作ったきっかけは?

海外に行く時って、靴は履いていくものと、もう1足くらいしか持っていけない。もう1足って、スニーカーになりがちですよね。 特に女性の場合は、レストランでディナーとか、スニーカーだとどうかな?というシーンが多いと思って、それが気になったのがきっかけです。

— 靴底が地図になっていたり、インソールにメッセージが書かれていたりしますね。

世界観というか、ちょっとしたユーモアというか、そういう一面を持った商品を作ってみたいな、と思ったのです。 デザイン自体はものすごくシンプルなものなので、遊び心を入れてみたいな、と思って。

— 商品へのこだわりを教えてください。

トラベルシューズと聞くと、軽量で運びやすいものを想像されると思います。もちろん、それはキーポイントだと思います。 でも、世界各国いろんな環境がありますよね、暑かったり寒かったり、地面が石畳だったり。 それを考えた時に、まずソールが一番の肝になるな、と思いました。よりグリップ性があるもので、柔らかさも重視したい。単純にゴム底にすれば値段も下がるし、買いやすいものになるであろうという発想ではなく、機能をまず考えました。 一番世界の中で信頼できるゴム底メーカーっていったら、ビブラムソールだな、と。そこでビブラムソール社に打診してみたところ、意外にも、とんとんと話が進んで。

— ビブラムソールという会社があるのですね?

そうです、イタリアの会社です。有名なのは登山靴のソール、タンクソールと言うゴツゴツしたソールです。

— ビブラムソール、素材の名前かと思っていました。

ソールメーカーです、靴底メーカー。 今は、タウン用など分野も広がって、登山靴以外も作っています。軽量のソールや、登山靴に使っている耐久性の高い滑りにくいソールなど。 通常のゴムは、氷点下まで温度が下がると固くなり、グリップ力が低下してしまい、どうしても滑りやすくなってしまうのですが、そうならないのがICETREK(アイストレック)という素材で、今回のトラベルシューズのソールにはそちらを使用しています。 ビブラムソールの中でもグリップ性の高い配合で作られているのがICETREKです。氷点下になっても、柔軟性を保ち、凍結した地表でも優れたグリップ力を発揮するので、旅先の色々な状況や環境に対応できます。



— 旅のお話が出たところで、前田さんによって旅とは?今まで行かれたところで思い入れのある土地とか。

毎年仕事で行くので、パリはやっぱりすごく好きな国です。 ただプライベートでは正直日本が一番いいな、と。温泉が大好きで、温泉地でのんびりするのが好きです。

— 意外ですね、靴デザイナーという職業から連想すると、イタリア・フランスなどヨーロッパのイメージでした。

そうですね、ヨーロッパも何ヶ国か行っていますし、それはそれで刺激的なんですけど、やはり日常とはだいぶ違ってくるので、リラックスすることができなくて。

— 前田さんにとって旅は刺激を求めるものではなくリラックスを求めるものですか?

リラックスできる方が好きですね。プライベートで旅をするなら、国内の温泉地をめぐる方が自分としては好き。食べ物も和食が一番だと思っています。

— HUMAN WOMANというブランドに対して持っているイメージはありますか?

けっこう長くお付き合いさせていただいているのですが、うちのブランドとモノ作りに対するコンセプトが通ずるブランドだと思っています。ベースがフレンチでトラッドな雰囲気もありますし、ワンシーズン着て終わるものというよりは長く着られるもの、素材にもこだわっているし。

— この記事を読んでくださる方々へのメッセージをいただけますか?

トラベルシューズというコンセプトでやっているので、旅先で使っていただきたいのはもちろんなのですが、日常履きでもあってほしいな、という思いもあって。少し遠出する時はおしゃれするけど、近所だと力抜くじゃないですか?そんな力を抜く時でも足元は少しおしゃれに…とか、そんなシーンで使っていただけたら嬉しいです。


【先行予約】HUMAN WOMAN別注カラー
ショセ トラベルシューズ/¥19,000(税抜)